朝日新聞 24年12月8日の記事
夫の夢だった平和記念館開く
主婦 横井 美保子
(名古屋市中川区 84)
夫は終戦を知らず28年間グアム島に潜んだ元兵士の横井庄一です。夫の願いをかなえたいと没後の2006年、「横井庄一記念館」を開きました。
ある日一人の紳士が来館されました。「父は私が2歳の時に戦死したので私は父の顔を知りません。歳月が流れ、私も還暦を過ぎました」「この記念館に来ることができ、大変うれしく思っております。父へ冥土の土産ができました」
この言葉を聞いて、私はびっくり致しました。小さい時からさぞ寂しくつらい思いをなさり、ご苦労されたであろう、戦争によってゆがめられたこの方の生涯を思うと、私の心は波立ちました。
「平和の灯(ともしび)はどんなに小さくとも、全くないよりはある方がよいではないか」。記念館に寄せる私の強い思いです。
「平和記念館」のつもりが「戦争記念館」と呼ばれていることを知りました。また戦争で大切な肉親を亡くされたたくさんの方々が、ひっそりと悲しみを隠して来館されていることにも気付きました。
人と人が殺し合う戦争が二度と起こりませんよう、ただひたすら祈っております。